休日のショッピングモール、駅の雑踏。人ごみの中でも片手で、スイスイ軽やかに移動できる自由。エアタイヤの優れた 走行性と小回りの効く三輪構造、そこにワンランク上の安全と快適さをもたらしたのが、『KARASAWA』のハンド ブレーキです。KARASAWAこと唐沢製作所は、自転車や車椅子業界で定評のある国産のブレーキパーツメーカーで 、1920年創業の老舗ブランドです。AIRBUGGYのハンドブレーキは、その唐沢製作所との共同開発。業界の垣根を 超えて、ものづくりへ情熱を注ぐ男たちの手により誕生しました。
今回のTALK WITH YOUは、ブレーキ開発をゼロから担当したGMP International(以下、GMP)の原口敬太が、唐沢製 作所を訪ね、開発を担当をしていただいた田中愛二さん、代表の唐沢一之さん、営業の高橋文人さんとお話ししま した。

2007年、中国 江蘇省にて製品組立を行う工場で生産品質管理を行っていた原口は、ある時、同じ工場内で他の企業が作るシルバーカートにハンドブレーキがついているのを見て、AIRBUGGYにも同じようにブレーキをつけることを思いつきます。
「AIRBUGGYは8インチエアタイヤを採用し、非常に走行性に優れています。さらに都会を快適に、かつ安全に走行するには何か制御する機能が必要だと感じていたんです。そんなときに、お年寄りでも楽に操作できるシルバーカーのハンドブレーキを見て、AIRBUGGYにもハンドブレーキをつけようと思い立ちました。当時、ブレーキ付きベビーカーは、海外のベビージョガー製品だけで、日本ではまだ一般的ではなかったんです」。目指したのは、誰もが直感的に操作できる、高性能なハンドブレーキ。原口は、さまざまな工場へ自らの足で出向き、信頼できる開発パートナーを探しました。そして最終的にたどり着いたのが、唐沢製作所の中国工場でした。「安価な海外メーカーもありましたが、たとえコストが掛かっても、いいものをつくろうという思想がAIRBUGGYにはあります。実際にお話を重ね、品質の高さに定評のある国内メーカー、その中でも唐沢さんにぜひお願いしたいと思ったんです 」。

当初は予算も少なく、ロット数も月500個と決して多くはない数量。厳しい条件にも関わらず、唐沢製作所はGMPの 提案を快く受け入れてくれました。『今は500と少ないけど、将来的には5000になると思っています』と語った 夢を理解してもらえたことに感謝しています」。当時の思いを噛みしめるように原口。
ブレーキ開発を担当したのは、当時、唐沢製作所の工場長を務めていた田中さん。長年にわたり、車椅子のブレー キなど、多くの製品開発に携わった方です。66年間に渡る勤務を終えた今でも、何かわからないことがあると田中さんに相談する社員もいるという。

田中さんは目に涙を浮かべながら、当時のことをゆっくりと振り返ります。「原口さんはね、初めてお会いしたとき からとにかく熱心な男でした。そのまっすぐで一生懸命な姿に惚れちゃってね(笑)。私たちも職人として、技術力で応 えたいと思ったんです。弊所にある寸法の合いそうな部品を改良することで、なんとか低コストで開発でできないか 、色々と知恵を絞ったのが懐かしいです」。
開発が始まると、課題解決に奔走する日々。赤ちゃんを乗せるベビーカーのブレーキは、静止音や効き具合など、自転車や車椅子以上に厳格な基準にマッチするよう、細やかな調整が必要でした。作っては改良、作っては改良の繰り返しを経て、ようやく完成へと近づけていきました。
特に苦労したのは、中国・台湾のサプライヤーとの意思疎通。唐沢製作所で作られる部品の誤差は、0.1mm以下。一 方、当時中国で作られる部品はそれを大きく上回る誤差があり、パーツを組み立てる際にとても苦労したといいます。「 唐沢さんにせっかくいい部品を作ってもらっているのに、組み立てがうまくいかないと本当に申し訳なくて。中国の スタッフとコミュ二ケーションを深めつつ、どうにか工場体制を整えていきました。本当に大変だったんですよ(笑)」 。言葉の壁もあり、最初は中々理解を得られませんでしたが、言葉を覚えながら粘り強く折衝を続けることで、最終 的には誤差を埋めるために皆、惜しみなく協力をしてくれるようになりました。

地道な努力が実を結び、ブレーキパーツが完成。2009年に、AIRBUGGY初のハンドブレーキ搭載式モデルが発売されました。発売直後から大変好評をいただき、『AIRBUGGY = ハンドブレーキ付きベビーカー』というイメージも徐々に定着するようになっていきました。
現在、唐沢製作所の確かな技術力を証明するように、ブレーキの修理依頼はほとんどありません。代表の唐沢さんは、こう語ります。「ベビーカー用ブレーキの開発は、私たちにとっても初めての試みでしたが、街中でAIRBUGGYユーザ ーさんをお見かけする機会も多く、微力ながらも世の中のお役に立てているのかなと嬉しく感じています。ブレーキの品質は人命に関わりますし、きちんと動いて当たり前であるべき製品です。社会的な責任を持ち、良い商材をご提供す ることで、これからもユーザーさんの喜ぶ顔を見ることができたら本望です」と語ります。ものづくりに対する謙虚な姿勢と、人の命と向き合う実直さの詰まったブレーキが、子どもたちの命を守ってくれています。

唐沢製作所では現在も、新たな商品開発に向けて準備を進めている最中。「自転車や車椅子以外のオーダーを頂 戴する機会も増えてきて、思いがけないところで自分たちのブレーキ技術が役に立つんだと気づくことも多いで す。ベビーカーももちろんそのひとつでした。GMPさんとは、これからもお互いの強みを生かしながら、ユーザーさんに驚きと喜びを感じてもらえる商品を作っていきたいと思っています」と話す唐沢さん。その言葉に「ハ ンドブレーキの生産数も年間4万台と開発当初より大幅に増え、少しは恩返しできているのかなと思ったりしてい ます。エアバギーの成長は、KARASAWAブランドのハンドブレーキがあってのことです。これからも一緒に成長 させていただけると嬉しいです」と、原口。2人の目には、お互いに対する敬意と、パートナーへの信頼が宿って いるように見えました。